フランチャイズで「オーナーがまったく働かない」は原則難しく、初期フェーズでは特に“現場に立つ覚悟”が必要です。
ただし、一定の仕組み化・人材育成が進めば「オーナー業に専念」することは可能です。
「店舗は回っていて自分は自由に暮らす」という理想を描く人も多いですが、実際には、事業が軌道に乗るまでの地道な関与が避けられません。
「働かないオーナー」が成立する3つの条件
1. 人材が安定して確保・定着していること
- 店長や責任者が信頼できる
- スタッフの離職率が低い
- 教育・マニュアルが徹底されている
現場の責任を委任できる人がいなければ、「完全に働かない」体制は崩れます。
2. 業務が標準化・数値化されていること
- 仕入れ、接客、営業、発注の手順が確立
- 日々の売上や原価、人件費が可視化されている
- トラブル時の対応ルールが明確になっている
属人化した現場では、オーナーが介入せざるを得ません。
3. オーナー自身が“経営者”としての役割を担っていること
- 数字分析(売上、利益率、CS、在庫)をして戦略を立てる
- 本部や銀行との交渉・新店舗展開などの意思決定を行う
- 店舗マネージャーの育成や複数店舗の統括
「働かない」=「手を動かさない」だけであり、「頭を使わない経営」は成立しません。
働かないオーナーが成立しやすい業種
業種 | 働かないオーナー運営の実現度 | 理由 |
---|---|---|
無人販売所(餃子、スイーツ) | ◎ | 人件費ゼロ、在庫補充・清掃のみでOK |
コインランドリー | ◎ | メンテナンスのみ、遠隔監視システムあり |
キッチンカー(委託運営) | ○ | 運転・販売を委託できれば管理のみでOK |
サラダボウル専門店(小規模) | △ | 原則現場管理が必要だが、教育次第では委任可能 |
コンビニ・飲食店 | × | 常に人員調整・現場対応が発生。完全放任は困難 |
「完全に働かない」ときの現実的な問題
スタッフ離脱時に代わりがいない
突然の欠勤・退職が発生した際に、現場を代行できる人がいなければ店舗が停止します。
売上低迷に気づくのが遅れる
現場から離れすぎると、「おかしいな」と思うタイミングが遅れ、手遅れになりがちです。
お金だけ減っていく「投資型経営」に陥る
現場に無関心のまま放置すると、赤字でも気づかずロイヤリティや人件費だけが出ていき、資金繰りが破綻する危険性があります。
ステップアップ型の“働かないオーナー”モデル
ステップ1:まずは現場で1人運営を経験
仕入れ、接客、収支管理を自分で体得することで、教育や管理の“目”が養われます。
ステップ2:アルバイトや店長に業務を分担
自分がやっていた仕事をスタッフに移行。育成と信頼構築がカギ。
ステップ3:管理者に店舗を委任し、自分は統括業務へ
複数店舗展開や新規業態開発など、“経営者の仕事”に集中。
実例:サラダボウル専門店の委任型運営
小規模なサラダボウル専門店(テイクアウト型、5坪程度)では、次の条件を満たせばオーナーが“現場に入らない”モデルも可能です。
- レシピや接客が標準化されている
- 食材の仕入れと発注がクラウド化されている
- 信頼できる店長が勤務管理を担っている
- 売上は毎日自動で可視化され、オーナーは分析のみ
このように、“仕組み”と“人材”が整っていれば、週1回の来店だけで回る場合もあります。
まとめ
「フランチャイズ=楽して稼げる」というのは幻想です。
しかし、「最初は働いて、あとから離れる」ことは十分に可能です。
鍵は、育成・標準化・数字管理。
そして、現場に入らなくても利益を最大化できる「仕組みをつくる力」が問われます。
「働かないオーナー」を目指すなら、まずは“働けるオーナー”として経験と信頼を積むことが最短ルートです。
ビジネスは誰かに任せるものではなく、仕組みで回すもの。その土台を自らつくれる人こそが、理想のオーナー像に近づけるのです。