フランチャイズの事業譲渡は、店舗経営を他者に引き継ぐ「出口戦略」の一つとして有効ですが、自由に売却できるわけではありません。
フランチャイズ本部の承諾が必須であり、契約内容や譲渡先の適格性によっては譲渡が拒否される場合もあります。
特に、本部との信頼関係、譲渡先の選定、従業員への配慮が重要なポイントです。
目次
フランチャイズにおける「事業譲渡」とは?
店舗や運営権を第三者(個人または法人)に引き継ぐことで、譲渡後は新オーナーがフランチャイズ契約を引き継いで事業を継続します。
- オーナーが引退や転職を理由に運営から離れたい場合
- 体力的・資金的に継続が困難になった場合
- 他事業に集中するために譲渡を選ぶ場合
などがよくある動機です。
譲渡の一般的な流れ
- フランチャイズ本部への相談・承諾申請
契約書に基づき、譲渡には本部の書面による承認が必要。 - 譲渡先(買い手)との交渉
信頼できる相手かどうかを本部が審査するケースも。 - 譲渡金額の決定・契約締結
営業実績や資産価値、営業権の価格などをもとに金額を決定。 - 本部と買い手による再契約・再研修
買い手は本部と新たなFC契約を結び、必要に応じて研修を受ける。 - 営業・店舗・従業員の引き継ぎ
売上データ、取引先、シフト、仕入れ先、マニュアルなどの移管。 - 譲渡完了、旧オーナーは事業から撤退
譲渡がスムーズにいかないケース
フランチャイズ本部が譲渡先を拒否する
- 加盟基準に満たない(経験・資金・年齢など)
- 過去にトラブルを起こした履歴がある
- 競合に属している、同業種で利益相反がある
譲渡契約が契約違反になるケース
- 契約期間中に無断で譲渡を進めた
- ロイヤリティ未払い、赤字経営による信頼低下
- ノウハウや顧客情報の流出リスク
譲渡金額の決まり方
譲渡金額は「営業権+資産+利益性+立地+ブランド価値」などで総合的に判断されます。
- 例)月商200万円、営業利益30万円の店舗 → 営業権+什器などで300万〜600万円が相場
- ブランド人気が高い場合や、立地が好条件ならさらに高額になることも
赤字店舗や業績不振の場合は、むしろ撤退費用(原状回復費など)を含めて“マイナス”の譲渡になる可能性もあります。
譲渡時に注意すべき点
本部との契約内容を再確認
- 譲渡条項に制限がないか
- 中途解約扱いとなり違約金が発生しないか
- ロイヤリティ・契約残期間の精算方法など
従業員や顧客への配慮
- 突然の変更はスタッフの不安や離職につながる
- 常連客や取引先への事前説明・引き継ぎが重要
譲渡後の責任範囲を明確化
- 債務やトラブルの責任範囲を文書で取り交わす
- 「引き渡し後の責任を負わない」旨を明記することで、リスク回避
事業譲渡が向いているフランチャイズ業種
業種 | 理由 |
---|---|
サラダボウル専門店(テイクアウト型) | 設備がシンプルで引き継ぎが容易、人件費も少なく後継者が見つかりやすい |
学習塾・教室系 | 教室と教材、顧客名簿を丸ごと引き継げる |
小規模飲食店(カフェ、ラーメン等) | 立地+設備の価値が継続しやすい |
無人販売所 | 人の入れ替えが影響しにくく、管理のみ引き継ぎで済む |
事業譲渡は「出口戦略」として活用すべき
フランチャイズ事業を手放すことは、ネガティブなことではなく「経営者としての柔軟な選択肢」です。
特に、年齢や体力、資金、ライフスタイルの変化に応じて、「譲渡して撤退 or 拡大」が選べることが、フランチャイズの利点でもあります。
譲渡を成功させるには、
- 早めに本部に相談
- 譲渡先を丁寧に選定
- 契約書を細かく読み解く
- 引き継ぎ準備を計画的に行う
という段取りが不可欠です。
事業は“始め方”だけでなく“終わり方”も重要です。
譲渡という手段を上手く活用することで、自分にも、譲り受ける相手にも、そしてブランドにもメリットのある形をつくり出すことができます。